自分のセンスを見つける久シン祭2025
今年もこの季節がやってきた。少し肌寒くなってきた秋の終わり、高校生たちは文化祭シーズンでワクワク、ウキウキかもしれない。そして同じように、もう三十路も半ばを過ぎたこの僕も、浮き足立つ気持ちを落ち着かせながら、この街、本町駅そばの久太郎町に降り立った。老若男女楽しめる、街の文化祭とでも呼ぶべき「久シン祭」が、ここ久太郎町で開催されるからだ。

久シン祭は株式会社 枠が主催するイベントで、今年で3年目となる。僕は昨年から参加しており、秋の楽しみのひとつ。久太郎町の丼池ストリートに立ち並ぶWRAPビル・OSKビル・丼池繊維会館という3つのビルに入る10のテナントが参加。10月28日(火)〜11月3日(月)までの1週間行われた。訪問したのは最終日の3日のことだ。
今年のテーマは「自分のセンスが見つかる街、久太郎町」。これは興味深い。「センスって難しいよな……」とよく思う。「センスいいね」と言われると「それはあなたの趣味に合ってるだけでは?」と思わないでも無いし、「センスに任せます」と言われると「(私の思う)いい感じにしてね」と言われているようでむしろ背筋が伸びる。センスって誰のものなんだろう。ひとり荒野に降り立ったときに、例えば「ファッションセンス」なんて存在しうるんだろうか。他人がいて、自分がいて、「あなたのセンス」が「私のセンス」をはかり、「私のセンス」が「あなたのセンス」をはかっているような気すらする。そんなことを考えながら、チラシのテーマを見つめる。自分のセンスをぜひとも見つけたいものだ。
さてそんな自問自答はここまでにして、今日1日を味わいつくそう。なんといっても今日は文化祭日和だ。3つのビルを行ったりきたりして楽しもう。
レポーター:嶋田翔伍(しまだ・しょうご)/12月から枠の仲間入り!
1991年3月京都生まれ。ひとり出版社・烽火書房(ほうかしょぼう)代表。京都のろじの本屋・hoka books店主。新卒の頃、本町駅近くの出版・制作会社で編集者として勤務。退職後、京都府下の市町村にて地域おこし協力隊を経験し、現在に至る。ナンセンスなギャグが好き。
LOVEの集まる美容室マルシェ―tokitowa
まずはWRAPビルの3階は、美容室のtokitowaにお邪魔する。こちらでは久シン祭にあわせてマルシェが行われている。出店者はみんなtokitowaと仲良しの人たちで、植物、お香、ファッションアイテム、美味しいご飯など、暮らしに寄り添うようなさまざまなアイテムを購入することができる。出店内容の幅が広いのが面白い。生業や住む街が異なっていても、通じ合えれば、人は仲良くなれる。「センスが似てる」ということなのかもしれない。
hushさんが並べる塊根植物は、どれも種から自分で育てているとのこと。しかもお店があるというわけではなく、個人的にやっていて、普段は販売していないそうだ。つまり、ここでしかお目にかかれない!それぞれの取り組みや生業に触れられるのはマルシェの醍醐味。すくすくと立派に育った植物を見れば、丁寧に愛情を込めて育てているんだろうと想像が膨らむ。
泉大津から出店中のBaumさんは、すごく豪華なおにぎりとサンドイッチ、お弁当を販売中。実店舗は家具工房とカフェが併設されたお店で、店内で使用しているテーブルや椅子などはBaumオリジナルの家具だという。写真を見て素敵な店内に感動した。
TARAHAさんはハーブティーとお香を中心に出店。紹介してもらった「ムゥダ」というお香は、南インドタミル語で「包む・まとう」を意味するとのこと。ジャスミンの香りは神に捧げる祈りの香りであり、女性の髪に編み込まれる香りでもあるらしい。直接インドで仕入れてきたハーブを調合した香りが、可愛らしい紙で包まれている。
店内にいた出店者のみなさんと話をしていると、「LOVE tokitowaです」という言葉が飛んできた。そうか、LOVEの気持ちがこの空間のセンスを生み出しているのか!
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目4−2 WRAP/英守大阪ビル3F
tokitowa
モリモリの魔力―yohaku
さてお昼時。今日は久シン祭のためにお腹を空かせてきている。お邪魔するのはOSKビル1階のレストラン「yohaku」。ディナーはコース、ランチはカレーが楽しめるお店。今回は久シン祭の特別メニューとして「パクチートッピングカレー」と「どクラシックティラミス」が通常メニューに加えて注文可能!パクチーは「トッピング(葉っぱの絵文字ひとつ)」と「モリモリトッピング(葉っぱの絵文字みっつ)」から選ぶことができる。
ここはもちろんモリモリを。パクチーといえば、タイ料理やベトナム料理が思い浮かぶ。好きではあるが、モリモリを、しかもカレーに載せて食べたことはない。勢い任せのモリモリが吉とでることを祈る。
「お待たせしました、モリモリトッピングです」という声に振り返ってみれば、そこには溢れんばかりのパクチー!僕は「山椒香る海老出汁とココナッツのカレー」と「レモングラス香るレモンクリームカレー」のあいがけを贅沢に注文。そこにパクチーがドン!
今回撮影を担当してくれた中田さんは「パクチーの地平線ですね」と上手いことコメントしていた。撮影する人はビジュアルで物事を捉えてイメージを広げるんだなと感心、センス勝負で一敗。
カレーとパクチーのマッチングはというと、これがものすごく合う。パクチーの独特の風味がカレーの味わいを引き立て、それでいてクセがない。モリモリにしたおかげで、シャキシャキ感がたまらない。これは新しいパクチーの楽しみ方だ。少しだけトッピングされているのと、モリモリとでは全く印象が違うはずだ。
「どクラシックティラミス」も特別メニュー。「食後でもぺろっと食べられる」「飲み物ぐらいの気持ちでつくった」ということらしい。しかし満腹につき頼めそうになく悔しい気持ちを堪えながら、枠のメンバーの大竹さん、對馬さんのふたりに実食を任せコメントをもらう。「ほんとに食べやすくて美味しい。『カレーは飲み物』と言うけど、飲み物はカレーだけちゃいましたわ」とのこと。実際のコメントが関西弁だったかは不明だが、センス勝負第二部でも敗北。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-22 OSKビル 1階
yohaku
想像力で広がるアンティークの世界―FlorBuho
次に足を運んだのはOSKビル2階のアンティークショップFlorBuho(フロールブオ)さん。こちらではホリデーアイテムが展開中。ここのところインテリアなんてあまり買っていなかったなと思いながら入店すると店内の至る所に可愛らしいアンティークが並ぶ。
1年前に北浜から移転してきたという。このあと15時には仕入れのため海外へ飛び立つ予定だそう。これだけたくさん並んだ品々が海外からやってきたんだと思うと、ようこそ僕らの街へと言いたくなる。
変わったお猪口のように見えたものはエッグスタンド。日本ではあまり馴染みのない食器だが、小物入れに使うのもいいと教えていただいた。
海外のアンティーク雑貨は、サイズ感が変わったものが多く「かゆいところに手が届く」のだという。もとの用途は何なのか、それに縛られる必要なんてない。ひらめきとアイデアで、好きなように使えばいい。そう聞くとアンティーク雑貨との心の距離が近くなった。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-22 OSKビル 2階
FlorBuho
ホッと一息、チャイ専門店―Akash Cafe
OSKビルを2階から1階に下り、Akash Cafeへ。こちらはシャドさんが営むチャイ専門店。期間限定の中から「EXTRA DARK」を注文。焦がしシナモンに燻製塩、65パーセントのチョコレートが入った温かい一杯。美しい二層の色合いに、飲むのが少しもったいない気持ちになる。
口に入れると焦がしシナモンが良い食感で、燻製塩は思いがけず甘みを引き立ててくれた。久シン祭にくるのもこれが2年目。昨年は冷たい「ハニーアップルチャイ」をいただいたが、全く異なる味わいと見た目を楽しむことができた。席に座り会話をしていると、思わず笑みが溢れる。開放的な店内から行き交う人たちを眺めながら、ホッと一息。何と何を組み合わせるのか、掛け合わせから生まれるセンスというものを感じた。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-22 OSKビル 1階
Akash Cafe
特別な天ぷらを提供!―Udon Kyutaro
久シン祭ではうどんも楽しむことができる。今回は訪問できなかったのが悔やまれるUdon Kyutaroさん。丼池繊維会館の1階のお店だ。
1日には限定トッピングとして高野豆腐の天ぷらが味わえたとのこと。実際に食べた人から感想を聞いてみると大絶賛。写真を見せてもらうと、なんとも可愛らしい。繊細ささえも感じる美しい天ぷらの佇まいに想像が膨らむ。
ちなみにこのお店、なんと朝7時から開店しているらしい。朝うどん、魅力的すぎる。仕事前に食べるのも元気がでそう。どこかに出かける前に食べるのも非日常的でワクワクする。朝まで飲んでシメという手もあるな。
ここまで紹介したのが5店。まだ折り返し地点、ひきつづき、自分のセンスを見つけるためにも久シン祭を楽しもう。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-16 丼池繊維会館 1階
Udon Kyutaro
ガラス戸の奥の世界―INSIDE MY GLASS DOORS
次に訪れたのは1階のINSIDE MY GLASS DOORS。大きなガラスのドアが入口になっていて、中の様子が道路からもよくわかる。国内外の上質な服が並ぶセレクトショップだ。店内に入ってまず目をひいたのが奥にかけられたタペストリー。白から黒へと移り変わるグラデーションと、細かなパッチワークから目が離せない。こちらは台湾の作家の方のもので、先週までそのブランドのフェアを行っていたという。
店内を見渡していると、何かが気になる。だがその正体がわからない。丁寧にディスプレイされた服を眺めながらお話をしていて、その理由がわかった。お店の中にある商品がどれもチェック柄であること。それは偶然ではあったが、裏地が格子状であったり、パッチワークされたものであったり、たしかにチェック柄の要素を見つけることができた。お話を伺っていると「今ちょうどチェックに惹かれやすいのかもしれません。気づいたらアースカラーをたくさん集めていた、みたいに引き寄せられることがあります」とのこと。
その時々によって、なぜかわからないけれど惹かれるという神託のような感覚を大事にすること、これもセンスのあらわれと言えるのかもしれない。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-16 丼池繊維会館 1階
INSIDE MY GLASS DOORS
香りと特別な体験―People Care. Planet Care.
同じく丼池繊維会館を2階へあがる。People Care. Planet Care.さんへお邪魔する。こちらは「香り」のお店。
光を放つ中央の台も印象的で、上質な空間と商品をじっくり味わうことができる。美しく並べられているのは「ハイドレーティング イールグラス ソープ」。岡山県備前市の日生のアマモという海草を用いた石鹸で、人間にも、地球にも優しい。もとはイギリスで製造されていたが、環境負荷を鑑みて、国内製造に切り変わっているとのこと。
あわせて中央の台に目を惹くものが置かれている。それはカラフルな色彩が遷ろう太い一本の線と、それを描いたであろう刷毛。こちらはドイツ在住のアーティストDaiki Kimotoさんの作品。参加型とも言えるもので、パフォーマンスに訪れた人たちが絵の具をたらし、15分ほどの時間をかけてDaiki Kimotoさんが線を引いて完成する。
パフォーマンスの様子を頭の中で想像する。代わる代わる訪れる思いがけない人々がカラフルな色を自分なりにチョイスしてたらしていく。じっくりじっくり線が引かれていって、鮮やかな一本の線が生まれてくる。特別な体験に違いない。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-16 丼池繊維会館 2階
People Care. Planet Care.
ビスコッティの新しい味わい方―aoma coffee
WRAPビルに戻り、1階のaoma coffeeへ。大きな焙煎機が店の奥にあり、美味しそうな香りが漂ってくる。こちらも昨年訪れており、そのときはエスプレッソとラテを同時に楽しめるという見事なコンボを味わうことができた。さて今回は……。
こちら「ラテ&PEROのビスコッティ」が特別メニュー。ちょうど時間もおやつ時。ラテとおやつを一緒に味わえるのは嬉しい。そう思いながら受け取った時、スタッフさんから案内をいただく。「ビスコッティはラテにディップして食べてみてください」。
なんと!単にセットであるだけでなく、一緒に味わうことができる。控えめにディップしてみてパクリ。美味しい。ザクザクと硬めのビスコッティが楽しい。次に思い切って、少しだけ長い間ディップしてみる。するとビスコッティが思ったよりもやわらかく、優しい口当たりに変化した。ラテも格別に美味しく、この組み合わせにハマりそうな気がしてきた。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目4−2 WRAP/英守大阪ビル1F
aoma coffee
私物に宿るセンス―waku.inc
WRAPビルの4階、株式会社 枠へ。こちらでは「クリエイター100人の私物(センス)市」と名付けられたマーケットが開催中。デザイナー、フォトグラファー、編集者、アーティスト、ショップスタッフ、飲食店オーナーなどさまざまな人たちが、私物を出品している。出品者は私物とともに「センスとは何だと思いますか?」と問いかけられており、会場では、私物とクリエイターの言葉が並んでいる。

出品されている私物は幅広い。おもちゃの箱から、書籍、オブジェに絵画、ファッションアイテム。センスとは何かにこたえる各々の言葉は名刺サイズの紙に書かれていて、カードを集めてリングに通していくことができる。ピンときた言葉を集めて自分だけのセンスZINEを持って帰ることができる。
ぐるぐる回っていて見つけた、ピンときた言葉をせっかくなので紹介しよう。センスとは。「知性を超えたものにまかせること」「違和感に気づく力」「ぶれない人が持つもの」。なるほど、人によって様々な解釈がある。
せっかくなので私物をひとつ購入。「ルワンダなメモリー集」と題された私物で、1か月のルワンダ旅行で手に入れた置物やアクセサリの詰め合わせ。気合いの入った出品だ。つい先日お面を集めている友人にコレクション自慢をされたので、自分でも買ってみようと思っていた。今この原稿を書いている横の壁でお面がこちらを眺めている。
参加しているみなさんのセンスに触れてワクワクしつつも、圧倒される。勝手に心の中で開催していたセンス勝負で言うなら、100人に敗北。これで通算0勝102敗だ(僕も出品させてもらったので、正確に言えば、0勝101敗1引き分け)。



〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目4−2 WRAP/英守大阪ビル4F
waku.inc
楽しむことが一番大事―nuance design
さてここで久シン祭のスタッフチームから声がかかる。「面白い光景が見れるから、ちょっとこっちへきてみて!」。そう言われて、WRAPビルを2階へ降りる。こちらはnuance design。MAスタジオ/音楽制作会社、本格的な音声収録ができるスタジオがある。オープンなスペースでは、美味しそうなおでんがぐつぐつ煮込まれていて「今すぐ食べたい……」と惹かれつつ、でも急いで奥のスタジオへ!
照明が落とされ、きらびやかなライトで彩られたスタジオにはDJブースが。久シン祭では「DJごっこ体験」ができる。音が鳴っているが演奏している様子はない。……と思いきや、ブースには笑顔の少年が立っていた。nuance design代表の宮坂さんが操作を教えたり、少し音を合わせたりしながら、少年は見事なテクニックを披露。夢中になって楽しんでいる様子に、こちらもほっこりする。
面白そうなことがあれば、何はともあれやってみる。そんな姿勢を新鮮な気持ちで眺めて、センスの呪縛から解き放たれるような気がしてきた。これはもう1勝0敗!というか勝ち負けじゃない!楽しい1日になった。
これからは目の前に映る「楽しそう」を見つけたら飛び込んでみる、それを自分のセンスということにして暮らしていこう。
〒541-0056 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目4−2 WRAP/英守大阪ビル2F
nuance design