【めがね舎ストライク・比嘉さん
× 株式会社人間・花岡さん対談】
変な経営者の共通点と相違点
「株式会社人間」と「めがね舎ストライク」。この2社は現在、僕(白井)が関わらせていただいている企業の中でも、特にお付き合いが長い企業です。
店頭にメガネを一つもおいてない眼鏡屋と、変なコンテンツを生み出し続ける制作会社。作るものに違いはあるものの、かなりこだわりが強く、変わった会社の代表であるお二人には、生き様や組織作りに共通点があるなと常々感じています。
今回は【組織の作り方】を主題に、お二人の共通点と相違点を<個人><会社><組織>の3つの視点から考察し、経営のヒントを見つけ出せたらと思い、お話しを伺いました。
■花岡
1981年、大阪市天王寺区の鶴橋生まれ。2010年、専門学校時代の同級生だった山根シボルと共に、大阪を拠点にWEBコンテンツやブランディング、イベントプロデュース等を行うコンテンツ制作会社「株式会社人間」を創業する。現在は株式会社人間の代表取締役兼、変なプロデューサーを務める。
■比嘉 大輔
1981年、兵庫県神戸市生まれ。めがね店の販売員、店長、バイヤーを経て、テーラーと客が対話しながら服や靴を仕立てる手法「ビスポーク」を採用しためがね店「めがね舎ストライク」を2016年に創業する。
白井:今日はよろしくお願いします。「株式会社人間」と「めがね舎ストライク」、制作しているものは全然違うんですが、かなり変わった会社を経営されているお二人には、生き様や組織のつくり方に似てるところがあると感じています。今日は「組織の作り方」を主題に、お二人の共通点や違いを分析していくことで、今後の経営のヒントを得られたらと思います。
花岡さん:こういう対談は好きだし、評価されるのも好きだから、面白そうです。
白井:僕が一緒に仕事をしている「経営者」というカテゴリーの中では、お二人が一番付き合いが長いんですが。比嘉さんとは、3年くらい。花岡さんとはもう6年くらいの付き合いになりますよね。
比嘉さん:もうそんなに経つんですね。すごいなあ。
白井:比嘉さんは、店頭にめがねを一つも置いてない、変なめがね屋「めがね舎ストライク」を経営してて、花岡さんは「株式会社人間」という、こちらも変な制作物ばかりつくってますよね。だいぶ変わったお二人がお話しするから、最後、めちゃくちゃ喧嘩して終わる可能性もありますので、どうかお互いのことを多少気遣いあってお話ししていただけたら幸いです。
比嘉さん:40代同士が大喧嘩するって、よっぽどですよ。(お二人は今年41歳の同い年)

個人について
白井:まずはお互いの仕事に対する姿勢の共通点についてですが、お二人とも、プライベートなんていらないって感じですよね。ずっと仕事してるイメージがあります。そのスタイルには、なにか理由があるんですか?
比嘉さん:めちゃくちゃ理由があります。まず、僕は29歳のときに独立したんですが、それまでは会社員でした。会社員時代は、仕事とプライベートの時間は完全に別物って感覚だったけど「この状態って、不幸せだよな」とずっと感じていました。仕事の時間すらプライベートと感じられるようになったら、毎日幸せだろうなと思ったから、独立後は仕事とプライベートを区別しない生活を送っています。
白井:今は幸せですか?
比嘉さん:すごく幸せです。仕事で打ち合わせしたりお客さんと話したり……もちろん「仕事」ではあるんだけど、純粋に自分が楽しめてる場面がすごく多いですね。
白井:花岡さんも、元々は会社員でしたよね。
花岡さん:会社勤めは2年ぐらいしかしてないですね。25歳からフリーランスになって、その頃からプライベートな時間なんてほとんどつくってないです。仕事してなかったら、どんどん売り上げが下がりますからね。
白井:なるほど。「売上」が大前提になってるのか。
花岡さん:仕事したら勝手に売り上げは上がる。でも、休めば売上は下がる。「プライベートとか言ってる場合じゃないな」と思ってしまうんですよね。
白井:お二人ともプライベートというものへのスタンスは同様である一方で、そのエネルギー源は、ポジティブ・ネガティブに分かれそうですね。
白井:性格の面ではお二人は真逆だと感じていて、比嘉さんは常識人に見せた変人。花岡さんは変人に見せた常識人と僕は思ってますが、実際どうですか?
花岡さん:比嘉さん、この髭で常識人なわけないですよね。
白井:お酒飲んだら裸になったりもしますし。結構破天荒なんですよ。
花岡さん:僕はすごく真面目。ビジネスで変人をしてるだけです、この髪型も含めて。努力して変人になろうとしてる、真面目ですからね。
白井:花岡さんにとって、「変人に見せること」も表現なんですね。比嘉さんは、昼間は真面目な人に見せてますよね。これって、もしかしたら各々の会社のビジネスモデルの違いも関係があるのかな?
花岡さん:たしかに、僕は周りから「変な人」であることを求められてますね。ストライクはお客さんから、ダンディズムを求められてそう。
比嘉さん:ダンディズム?! まあたしかに、お客さまはわりと上品な方が多いので、僕がやばいやつだと不安にさせてしまいますからね。ストライクが提唱する「ビスポーク」は、対話の中でものづくりをするっていう概念ですし、接客の距離が近いですから。
花岡さん:そもそも「ビスポーク」ってなんですか?
比嘉さん:「Speak」の受動態で(語源は「be spoke」から)。スーツとかだったら、テーラーの人が要望を聞いて、個人に合ったものを仕立ててくれる文化が浸透してますが、「めがね」の業界では今までそういった文化がなかったんですね。それを、僕ははじめて売り物にしたんです。
白井:一般的に「オーダーメイド」っていうと、こちら側が要望を伝えるイメージだと思うんですけど、「ビスポーク」はお客さんの顔つきや、身につけたいシチュエーションなんかを考慮して、つくり手が提案する手法なんですよね。
比嘉さん:そうですね。ただ、世の中が「消費」のマインドに向けてずっと走ってきたから、僕や花岡さん世代の人たちなんかは、買うものすべて量産されたものを使ってきたと思います。今ではみんな量産品を身につけて、標準化されすぎてつまんないですよね。
花岡さん:そしたら、僕たちが広告とかデザインとかつくるときもビスポークですね。対話して、提案して作品をつくっていくのが一連の流れだから。つくるものや業界のちがいは関係なく、質の高い作品をつくるためには欠かせない制作手法なのかもしれないですね。
比嘉さん:ほんと、その通りで。「ビスポーク」は絶対、今後も残していかないといけない制作スタイルだと思っています。
白井:この制作スタイルを貫いていくには相当な提案力と自信が必要だと思います。やっぱり二人とも変態なのかな?
会社について
白井:会社の姿勢に関しては、2社ともすごく似てますよね。花岡さんは、これまで社会になかったものをつくろうとしてて、比嘉さんは、これまでめがね業界でやってこなかった提案をしています。違うことをしようとするお二人のモチベーションって、どんなところにあるんでしょう?
花岡さん:株式会社人間に関しては、「面白くて変なことを考えている」っていうのをスローガンにしているので。いかに、今まで誰もしたことがない表現を世に出していくかを、事業として続けてるから。それが会社を運営している目的でもあります。
白井:変なことをするために、仕事してるんですね。
花岡さん:そう。それがなくなったら終わりです。だから「社会に、これまでなかったもの」っていうのは、そういうことかな。
比嘉さん:なるほどね。ただ、変わったアイデアって、見る側は楽しいけどつくる側は本当にしんどいと思うんですよ。自主的に変なアイデアを出してもらう社内の文化って、どうやってつくったんですか?
花岡さん:意識的に、社員に向けて「アイデア出して」って、常に僕から言ってます。頻繁に企画会議もしていますし。そうすると「言われなくても、自分からアイデアを出すのがこの会社のなかでは当たり前」と社員が認識してくれる。そもそも自分から変なアイデアを出したいような人しか入ってこないから飲み込みが早いのかもしれないです。もちろん、時勢に合わせたりリサーチしたりはするけど。
比嘉さん:いいですね。会社や社員教育で一番重要なポイントだと思います。社員が育つ会社って、会社のあり方とか、社長の考えがわかりやすいことが重要なんじゃないかな。人間さんなんて、めっちゃ変な教育してるのかなと思ってたけど、すごくシンプルでわかりやすいんですね。
花岡さん:たしかに「面白くて変なことを考えている」はすごくシンプルな行動指針ですね。

白井:たしかに、めちゃくちゃわかりやすい。比嘉さんも、起業からいままでほぼ休まずで、すごい精力ですよね。そのモチベーションってどこから湧いてくるんでしょうか。
比嘉さん:精力……。二つ理由があるかな。一つは、単純に偉大な人になりたいのかも。そのためには、今までこの世になかったことをしないと、抜きん出ないよなと思っています。二つ目は、ずっとめがね業界のあり方に疑問を感じていたから。めがねって、基本「仕入れして売る」しか販売方法がないんです。サイズもワンサイズしかない。僕はずっとセレクトショップの店員とか、バイヤーをやってたんですけど「このお客様には、このサイズのめがねは合ってないのにな」って、ずっとモヤモヤしてました。
白井:「怒り」の感情もありそうですね。
比嘉さん:そうそう、怒り。「なんでめがね業界、こんな感じやねん!」ってところから意地になって、自分で新しい文化を作り出そうと思った。
花岡さん:怒りは大事ですね。僕らも負のエネルギーを原動力にものづくりしてる面もあって。学歴コンプレックスとかね。第一線で勝負している人たちって、やっぱり早稲田慶應卒とか東大卒が多いけど、そんなことで負けたくない気概は大事ですね。
白井:そうか。「怒り」や「コンプレックス」は原動力になるのか。
白井:お金の使い方についてですけど、花岡さんってめっちゃケチですよね……。
花岡さん:ケチですね。小学生のときから周りに「ケチ」と言われてました。
白井:子供の頃からなんだ……。比嘉さんは真逆で、金遣いが荒いというか、すごい豪快な買い物とかしますよね。花岡さんは、お金を使うときは最後の最後まで嫌がってる感じがします。お互い、その性格で得しているところと損しているところを教えてほしいです。
比嘉さん:花岡さんはどこでお金を使うんですか? 社員の方と飲みに行ったり? 接待とか……。
花岡さん:まったく行かないです。
白井:ランチも、一緒に食べても別会計ですよね。
比嘉さん:えっ、そうなんだ……。
花岡さん:比嘉さんは払うんですか? なんで?
比嘉さん:払いますけど、なんでか……理由を考えたことはないですね。
花岡さん:見栄はってるんじゃないですか?
比嘉さん:見栄……。見栄なのかな……? ほんとに、意識したことがなかったです。
花岡さん:お金って、すごく上下関係を作るじゃないですか。気を遣うのも、遣われるのもいやなんですよ。あと、社内では僕しかお金のことを見ていない。僕が最後の砦になっているんです。だから、基本はケチ経営です。ケチだとお金は残りやすいし、いいこともありますよ。損なことは、周りに「ケチな人」って思われることかな。
白井:はい。それはみんな思ってます。と言っても少しフォローすると、会社にはお金を自由に使える制度もいろいろ導入してますよね。
花岡さん:社員のノマドワークの飲食代は会社が負担してるし、月1万円までなら「勉強代」として、映画観てもいいし、本買ってもいいしコンサート行ってもいい制度をつくってます。
比嘉さん:それ、社員さんにとってはめっちゃいい制度ですよね。
花岡さん:例えば、オーケストラのコンサートって一万円とかするわけじゃないですか。値段を見て「高いからやめておこう」っていうのは、機会の損失ですごくもったいない。だから、会社が金銭面を負担する制度を導入しています。
白井:一方、比嘉さんは、めちゃくちゃ大胆にお金遣いますよね。比嘉さんってもう一社会社を経営してるんですけど、そちらの共同代表から「比嘉さんに似合うと思って」って20万の革ジャンを送りつけられても、喜んでましたから。もちろん領収書は比嘉さんの名前で。
花岡さん:え? 払うの? 20万円を???
比嘉さん:はい。めっちゃかっこいい革ジャンで、センス良くて嬉しかったですね。
花岡さん: ちょっと……僕には考えられないですね……。
白井:比嘉さんは、その性格で得してることってありますか?
比嘉さん:ものを買うときやお金を動かすときに、悩まないことで時間は得してます。あと、よく飲みに行くから飲食代もかさむんですけど、そこから人のつながりも生まれてますね。ただ、いつも飲みすぎてしまうから、記憶もお金もどんどんなくなるんですよ……。
花岡さん:記憶はなくしたらあかんやん。でも、社長でこれだけ飲みに行かないっていうのは、僕がレアケースなのかも。あと、うちの会社には共同代表がいるから。人間は山根さん(株式会社人間のもう一人の代表)の会社でもあるので、僕一人が好きにお金を使うわけにはいかないって気持ちもあります。
白井:お二人の姿勢から勉強させてもらうことも多いです。花岡さんからは「自分が”無駄”だと思うことに、お金を払う必要はあるのか?」ってこと。逆に、比嘉さんからは「欲しいものは迷わず買え」ってことを学ばせてもらってます。それはどちらも時間を無駄にしないための方法だったんですね。
花岡さん:比嘉さんは会社のお金の管理って、自分でしてますか?
比嘉さん:僕がしてますね。
花岡さん:金遣いが荒いのにちゃんと経営が成り立ってるってことは、このままでも安泰で、むしろケチになったらお金が余るってことですよね。うちの場合は会計士さんに「これ以上、絞れるところがないです」って言われてるから、お金がなくなったときの金策が一切ないんです。
白井:比嘉さんの場合は、資金繰りがあやうくなってきたら少し節約すればいいだけで、余剰があるということですもんね。
比嘉さん:そう言われると、たしかに僕が節約するだけですぐ余裕は生まれると思います。ただ、先ほどもお話ししたように、外でお金を使うと得られるものも大きいんですよね。今、うちで働いてくれてるバーテンの方も、飲み歩いてたからこそ知り合えたご縁ですし……。
白井:さっきの革ジャンの話も、勝手に買っちゃう共同経営者の方とそれを喜んで買い取る比嘉さん、二人とも粋でかっこいいなと思います。
花岡さん:僕ならすぐ返品します。
組織について
白井:組織についてですが。共通点でいうと、両社とも社員の自主性が高い組織だなと感じています。人間って、自分から提案を持ってくる社員のばかりですよね。ただ、企画やデザインに関してのこだわりも強いから、ケンカになることも多い印象です。
比嘉さん:喧嘩……? 「あ?やんのか?」ってことですか?
白井:そういう喧嘩じゃなくて、自分の納得がいかないことは理詰めにしてくる人とか、全然人の話を聞かない人とか……。花岡さんとはじめて会ったとき、「僕ひとりで猛獣使いをやってるから、白井さんに手伝ってほしい」って言われたんですよ。
比嘉さん:猛獣使い……?
白井:「会って話したら、どういうことかわかるから」って言われて、プレゼン資料持って人間にお邪魔したんですけど。その日は花岡さん以外に、幹部クラスのメンバーが3人いて。
花岡さん:そうそう。
白井:まず、僕がつくったプレゼン資料を見て、「デザインのせいで、内容が頭に入ってこーへんわ」って。提案内容じゃなくて資料のデザインの指摘ばかりされて、「なんだこの人たち!」って思いました。人が、せっかく1週間かけて作成した資料を、開口一番悪口ですから。でも、裏を返せばこだわりの強さってプロフェッショナルなんですよ。ふつう、そういう人たちって独立したり個人で仕事をするんだけど、なぜか人間は集まって会社をしている。
比嘉さん:まさにプロですね。すごいなー。
白井:社員全員にそういう細かいこだわりがあるからこそ、あれだけ尖った制作物が生まれるんだと思っています。僕も人間で鍛えられて、資料のデザインとかそれなりにできるようになったのでありがたいです。プレスリリースも、再考に再考を重ねてver.40までいきますからね。そんな会社は人間くらいです笑。でも、だからこそ結果が出るのかもしれないです。

白井:ストライクの社員さんも、各々の任された範囲に関するこだわりと自主性が高いですよね? 社長である比嘉さんが、会議でいつも理詰めにされてますもんね。(ストライクには販売だけでなく職人、デザイナー、PRなど一般的な眼鏡屋にはなかなかない役割が存在する。)

比嘉さん:たしかに、毎回会議でそんな流れがありますね。
白井:前に、めがねのデザインの話が発展して「70年代の眼鏡のデザインは、かっこいいか否か」で社員さんと比嘉さんが1時間ぐらい議論してたことがあって。それこそ、最後ちょっとケンカみたいになってましたよね笑。僕はそれを傍目で見てて、すごくうらやましかったです。
花岡さん:それはすごい情熱ですね……。ちなみに僕、めがねの知識が一切ないんですよ。視力が1.5あるから。
比嘉さん:めがねに興味がない方から見たら、異常者の集まりですよね笑 うちは元販売員しかいないから、みんなめがねに対する情熱やこだわりがすごいんですよ。全員、めがねが好きで好きで、それがこうじてうちで働くことになったメンバーなんで、一人ひとりのめがねに対するこだわりもすごいんです。
白井:人間でいうと、毎年の年賀状企画がすごいですよね。年賀状の案出しって、ようは全員参加の大喜利なんですよ。
比嘉さん:前に、白井さんから聞いた覚えがある。
白井:年賀はがきのデザインを模したレジャーシート「でかい年賀状」とか、煉瓦を手作業ではがきと同じサイズに切断した「煉瓦状」とか、めちゃ変なものを毎年正月に500人くらいの人に送ってるんですけど。これはなんでもアリの企画大会だから、アルバイトもインターンも参加して、採用されるために一人5〜10案くらいの企画を本気で出すんですよ。
比嘉さん:すごい、毎年企画大会みたいなことをするんだ。
白井:みんな自分から率先して参加するんです。さっきも話したけど、「面白くて変なこと考えてる」って行動指針がしっかり浸透していて、そういう人たちがおのずと集まってくるから、この自主性が生まれるんですよね。
花岡さん:あと、僕が社内であんまり偉そうにしないよう心がけてます。ワンマン経営だと、いくら口で「自主的に動いて」って伝えても、絶対そうならない。自主的に動いてもらうには、社長のスタンスが何より大事だと思いますね。



白井:比嘉さんはどうですか? 社員の自主性って、意識されてますか。
比嘉さん:もともと、ストライクは僕と職人役の二人で立ち上げた会社なんですが、当時はなんでも自分一人で考えて、行動してましたね。2020年に、京都の藤井大丸に出店が決まって以降は一気に社員が増えて、総勢8人ぐらいになって。そこからは、自分一人で動くのはやめて、分担できるよういろいろ工夫しています。
白井:ちょうど、僕がストライクに関わり出したタイミングですね。
比嘉さん:うちも、行動指針をすごく大事にしているんです。「ど真ん中を、目掛けて。」がストライクの指針ですが、まだ技術が追いついていない社員でも、まずこの指針を軸にがんばってほしいんです。
花岡さん:たしかに、まず「がんばる」っていうのはとても大事。技術を身に付けたら、結果はおのずとついてくるものですからね。
比嘉さん:花岡さんの話を聞いてて、ここがうちと人間さんの共通点なのかなって。「軸はこうだぞ」って伝えて、あとは自由に動いてもらう。もちろんフォローはするけど、こういう働き方が自主性をあげるんじゃないかと思いますね。
白井:軸(行動指針や理念)を定めてあとは自由。いいなー。真似しよう。
白井:共通点がわかったところで、相違点の話も……。あくまで、これは僕の視点からの話ですが、人間は「トップダウンに見せたボトムアップ」で、ストライクは「ボトムアップに見せたトップダウン」な気がしてます。人間は、元々山根さんと花岡さんが学生時代にはじめた「チーム人間」っていうアート活動がもとになってる会社なんですが。
比嘉さん:学生時代から活動してたんだ。
白井:そうなんです。だから「株式会社人間」もお二人の表現の拡張で成り立っているトップダウンの企業かと思いきや。社員みんなの表現を大切にしたい花岡さんの意思をすごく感じる組織なんです。ストライクも、もともとはさっき話にあがった職人さんと、二人で高架下ではじめた事業なんですよね。
比嘉さん:そうです、二人だけでした。
白井:比嘉さんがフロントに立って、職人さんがバックに立って……というスタンスで運営していたんですよね。だから、社員さんが一気に増えた当初は、みんなの意見を吸い上げようとしている比嘉さんの意思は伝わるけど、最後は比嘉さんに決定権がある組織だった気がします。
比嘉さん:うちの場合、先程もお話ししましたが高架下でたった二人ではじめた事業で、一人は職人さんだったから、なにもかも僕が考えて、さらに自分で動かないといけなかったんです。はじまりがそういう体制だったから、長い間「自分が動かないと」という意識でがんじがらめになってました。今は優秀で情熱もある社員が周りにいるので、僕の意識もかなり変わったと思います。
白井:体制も徐々に変わっていってるんですね。
比嘉さん:そうですね。今は「なんでも一人でこなさないと」という意識はなくなってきています。創業から長らく、僕のワンマン的な気持ちが強かったから、ストライクを組織めいた集団にできていなかったのかもしれません。今は社員全員と並走している感覚です。
花岡さん:並走って、大事かもしれないですね。僕も、社員がしたいことはできるだけ叶えたいと思ってるんです。やりたいことがあるから、うちに入ってきてるはずなので。だから、面談などを利用して、1対1の対話の時間は欠かさないようにしてます。
白井:花岡さんって、人間から独立した人のこともずっと応援してますもんね。退社した後も、普通に一緒に仕事したり。
花岡さん:そうですね、そういうパートナーも多いです。
白井:ボトムアップ、トップダウンというより、花岡さんは後方からケツを叩きながら、比嘉さんは先頭で全員を引っ張って、できるだけ並走の形で走れるようにしてるって感じなのかも。
白井:最後になるんですが、お二人の口癖って特徴的だなと思っていて。花岡さんはよく、話の最後に「まあええけど」って言いますよね。
花岡さん:その一言がよくないやん。
白井:よくないんですよ笑。でも、口癖ですよ。比嘉さんは「もうちょっと考えたいなあ」ってよく言いますよね。
花岡さん:そっちもイヤな口癖ですね……。
白井:そうなんです、どっちもイヤな口癖なんです。でも、この口癖から、二人の葛藤が垣間見えるような気もしていて。花岡さん、よく会議のときに天井を見上げながら「まあええけど」って言いますよね。
花岡さん:要は、妥協してるんです。組織である以上は妥協も絶対必要なんですよ。でも「がんばれよ」とも言いたい。だから最後に「けど」がつくんですよね。
白井:「ちゃんとやりきれよ」ってことですか?
花岡さん:「僕は妥協します。だからがんばってください」って意味をこめてるつもりです。
比嘉さん:僕は……どうだろうなあ。
白井:会議の最後によく言ってますよ。
比嘉さん:なにかを決めかねてる状態の、揺らぎが好きだという性格でもあります。ただ、カチッとハマるアイデアって、AからZまですベての流れがきれいに収まっている場合が多い。その言葉が出るときは、単純に、どこかの要素が腑におちてないのかも……。
花岡さん:社長が「もうちょっと考えたい」って言ったら、社員は「自分がもうちょっと考えないと……」って思いますよ。
白井:いや、ちなみに「まあええけど」の後も社員は悩んでますからね、絶対。「まあよくないな……」って悩んでますから。
花岡さん:そういう意味では、「まあええけど」も「もうちょっと考えたいなあ」も一緒の言葉なのかもしれないですね。
白井:さっき「両社とも、社員の自主性が高い」って話が出ましたけど、それでも、どちらの社員さんも、最後は「どう思いますか?」って社長の意見を必ず伺ってますよね。これも、2社の共通点だと思います。
花岡さん:そうかなあ。
白井:安い言葉だけど、これがカリスマ性なのかな……。
花岡さん:安いなー。いやですね……。
比嘉さん:カリスマ、なりたくないなあー笑。ただ、うちは僕ひとりで考えて動いてた時代が5〜6年あったんで、その感覚がまだ抜けてなくて、後々「やっぱりやめとこう」と意見を変えてしまうことも多いんです。従業員は、それを回避したい面もあるんじゃないかな。
白井:なるほど、従業員のリスク回避の意識もあるのかもしれないですね。

白井:今日お話を聞いてて思ったんですけど、やっぱり2社とも結構共通する部分が多かったです。
花岡さん:いやいや、そんな共通点あった?
比嘉さん:そうかな?
白井:ありましたよ! え。あったでしょ?二人とも変だから認めたくないのか。
比嘉さん:「白井康太」というフィルターを通してみたら、確かに共通点も多かったのかもしれないね。
白井:全然認めない。
源というか、モチベーションはちがいますけどね。比嘉さんはポジティブアプローチ、花岡さんはネガティブアプローチだとも感じました。でも、2社とも最後にいきつくのはこだわりの強い変な表現で、お二人とも、スタートはまったくちがうけど、個性を大切にしているところも大きな共通点ですね。
ひとまずケンカにならなくてよかったです。本日はありがとうございました!
今回の気づき
・「プライベートと仕事」ではなく「楽しい仕事をつくる」というスタンスが事業を育てる。
・広告やプロダクトや仕組み。つくるものや業界が違っても「ビスポーク」で生まれるクリエイティブの価値は高い。
・組織や社員の育成で一番重要なポイントは、会社の存在意義や行動指針がわかりやすいこと。
・倹約家と浪費家、どちらであっても経営者としてそれぞれの利点がある(もちろんリスクもある)
・働き方の「軸」を伝えて、あとは口出ししない(フォローはする)方針が、社員の自主性を高める
今回お二人の話を聞いていて自主性の高い組織を作るためには、「単純明快な軸を作る」ことと「その軸を採用基準に変換する」ことが重要で、あとはあまり規律を作りすぎずいかに自由を保つかが重要だと思いました。枠は「その関係は気持ちいいか?」という明確な軸がある一方で、僕はついつい色んなことに口出ししてしまうので、自由と規律の調整がまだまだできていないなと感じました。
その上で代表ができそうな努力としては
①代表が自身のブレに気がつく仕組みをつくること
②社員といつでもケンカできる(いい意味で)関係性を目指すこと
(答えは出てないけど、代表がボケ、社員がツッコミだといいのかもしれない)
③代表がリードするかケツを叩くかどちらかのスタンスでもいいので、完全なるフラットよりかは少し前か後ろを走る形で並走すること
これらを意識してまた明日からみんなと走って行こうと思います。
今回のどうでもいい気づき
変な経営者の特徴
・見た目が変
・似てると言われるのがいや
・カリスマと言われるのがいや
・対談させるとすごくまともなことを言う